「健康診断で“脂肪肝”と言われたけれど、特に症状はないし放っておこう…」
そんな方は要注意です。脂肪肝は放置すると、炎症や線維化を伴う「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」に進行する可能性があります。近年、この進行の裏側に「糖化ストレス」という新たな犯人が関わっていることがわかってきました。
糖化ストレスと酸化ストレスの関係
糖化最終産物(AGEs)は糖、脂質などに由来するアルデヒドが非酵素的にタンパク質やDNAと結合する反応によって生じる物質で、老化やさまざまな疾患の進行に関与することが知られています。
特に、食後高血糖に伴う急激な血糖上昇(血糖値スパイク)により、糖を由来として連鎖反応的に多様なアルデヒドが同時に生成されることが知られています。脂質由来のアルデヒドは脂肪酸の酸化によって生成され、その中でもメチルグリオキサールは糖や脂質の両方から生成されるアルデヒドであり、体内のさまざまな疾患の発症に関与しています。それ以外にも、アルコール、タバコに由来するアルデヒドがあります。
このように生成されたアルデヒドは非常に反応性が高く、血中の血清タンパク質や血管内皮細胞の膜、そしてDNAの塩基であるシトシンとも反応してしまいます。
一方、一般的にもよく知られている酸化ストレスとは、反応性の高い活性酸素種やフリーラジカルが過剰に存在する状態を指しています。
ビタミンCやビタミンEが代表的な抗酸化物質として知られていますが、これらの抗酸化物質は、アルデヒドとタンパク質やDNAが結合する糖化反応を抑制することはできません。
糖化ストレス防御機構である肝臓
糖化ストレスにより発生するアルデヒドに対し、ヒトの体内には抗糖化システムが存在しており、肝臓が極めて重要な役割を担っています。特に、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、グリオキサラーゼ(GLO)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)といった酵素が体内で生成される有害なアルデヒドを分解・無毒化する主要な機能を担っています。
これらの重要な酵素のうち、今回はGAPDHにフォーカスしたいと思います。
糖化ストレスに対するGAPDHの働きとNAD+
代表的なアルデヒドの一つ、グリセルアルデヒドはエネルギーを作る解糖系で生成されることが知られています。
このグリセルアルデヒドは、NAD⁺を補助因子としてGAPDHにより代謝され、最終的にはエネルギーへと変換されます。この時、NAD⁺はNADHへと変換されます。また、NAD+は飲酒により発生するアルデヒドでも消費されてしまいます。
つまり、NAD+はアルデヒドを代謝する際の重要な物質です。しかし困ったことに、このNAD+はアルデヒドの代謝だけでなく年齢により低下してしまうことも知られています。
NAD+の減少がもたらす脂肪肝の悪化
アルデヒド代謝の過程でNAD⁺が消費されてNADHに変化されてしまい、このNADHが過剰となると脂肪酸合成が促進され、脂肪酸のβ酸化が抑制されるため、脂肪の蓄積が進行し、脂肪肝が悪化してしまいます。
脂肪肝の状態でさまざまな免疫細胞が肝臓に入ってくると、脂肪性肝炎となり、さらに悪化してしまうと肝硬変へとつながります。
従って、余剰なアルデヒドを生じる糖化ストレスが乱れることは、単なる脂肪肝として留まるか、脂肪性肝炎へと進行するかの分岐点となる可能性があるのです。

まとめ
肝臓は、有害物質から私たちを守る重要な働きをしています。肝臓を守るカギは、アルデヒドが過剰とならないことですが、そのためにはアルコールだけでなく、「糖化ストレス」にも気を配る必要があります。
意外かもしれませんが、糖化ストレスとNAD+の消費は非常に近い関係にあるということですね。
糖化ストレスを抑え、NAD⁺を守ることが、肝臓を守る第一歩です。そのためには、血糖値スパイクを避ける食生活、過度な飲酒や喫煙の制限、そして抗糖化・抗酸化成分を含む食品の摂取が重要です。
健康は美と自信に繋がりますね!
また、NAD+はミトコンドリアとも密接な関係にあるので、改めてコラムにしたいと思います。
引用文献
※ 注意
本記事はあくまで情報提供を目的としたものであり、医学的なアドバイスではありません。
健康上の問題のある方は、必ず医療専門家にご相談ください。
