髪の老化、実は「糖化」が関係しているかもしれません
最近、「糖化(glycation)」という言葉を耳にする機会が増えました。
シワやたるみといった肌の老化現象の原因として、美容雑誌やメディアでも頻繁に取り上げられています。
ところで、「髪」も糖化することをご存知でしょうか?
近年の研究により、髪のエイジングにも糖化が関与している可能性が明らかになってきました。肌と同様に、髪も糖化によって変化し、見た目の印象に大きく関わることがわかっています。

糖化とは?──老化を進める「終末糖化産物(AGEs)」
糖化とは、体内で余分な糖とタンパク質が結びつき、「AGEs(Advanced Glycation End-products)」という老化促進物質が生成される現象です。
このAGEsは、肌の弾力を失わせたり、血管を硬化させたりと、さまざまな老化現象に関係しています。
そして驚くことに、AGEsは髪の毛の内部にも蓄積することが報告されています。
糖化については、こちらのフラコ記事もご覧ください👀
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髪の糖化によって何が起こるのか?
たとえば、「Hair protein glycation reduces hair breaking strength(髪の糖化が切断強度を低下させる)」という論文では、以下のような実験が行われました【*1】。
毛髪を、グルコースに2〜8週間浸した結果、以下のような変化が確認されました:
- キューティクル構造の崩壊
- 毛髪内部に空洞が発生
- 髪の切断強度が低下し、切れ毛が起きやすくなる
「髪がパサつく」「ツヤがなくなった」と感じる要因の一つが、髪の糖化による可能性があるかもしれません。
髪も「タンパク質」だから糖化する
髪の主成分は「ケラチン」というタンパク質です。
このケラチンは、肌のコラーゲンと同様に糖と結合しやすく、AGEsの生成につながります。
つまり、髪も糖化の影響を受け、エイジングサインとして現れるのです。
たとえば、以下のような変化に心当たりはありませんか?
- ハリやコシがなくなってきた
- 髪のツヤが減ってきた
- 切れ毛・枝毛が増えた
これらは、単なる乾燥やヘアダメージだけでなく、「糖化」のサインである可能性があります。
体内で知られていること
上で紹介した論文は、髪の毛と糖を試験管内で反応させるというものでしたが、例えば糖尿病患者では、根本2 cmの毛髪部分では、初期の糖化産物が、非糖尿病者に比べて約3.1倍増加していることが示されています【*2】。
糖尿病患者さんでは、血管が傷つき血流が悪くなることで、抜け毛や薄毛のリスクが高まる可能性があると言われていますが、もしかするとAGEsが大きな影響を及ぼしている可能性があります。
最近では、毛髪を持ちいた抗糖化物質の研究も行われているようです。
髪のエイジングケアに、抗糖化という視点を
では、髪の糖化を防ぐにはどうすればよいのでしょうか。
研究や美容医学の観点からは、以下のような「抗糖化ケア」が推奨されています。
- 糖の過剰摂取を控える(血糖値の急上昇を避ける)
- 抗糖化成分(ビタミンC、ポリフェノール、イソフラボンなど)を食事やサプリで摂取する
- 抗糖化ケアに対応したサプリ、シャンプーやトリートメントを選ぶ
- 紫外線対策を行う(UVもAGEsの発生を助長します)
特にMGOのような強い糖化因子は、現代の食生活(精製糖質・加工食品)で過剰に摂取されがちな点にも注意が必要です。
まとめ:髪にも“中からのエイジングケア”を
髪の老化は、乾燥や摩擦だけではなく、「糖化」も見逃せない要因であることが分かってきました。
年齢とともに、髪質が変化するのは自然なことですが、日々の習慣や栄養によって、予防・改善できる部分も多くあります。
肌と同じように、髪も“内側からのエイジング対策”を取り入れることが、美しさを保つ新しい常識になりつつあります。

※ 注意
本記事はあくまで情報提供を目的としたものであり、医学的なアドバイスではありません。
健康上の問題のある方は、必ず医療専門家にご相談ください。
参考文献
- Shimode et al. “Hair protein glycation reduces hair breaking strength.” Glycative Stress Research 1(2): 37-45, 2014
- Nissimov, Joseph et al. “Method for chronological recording of antigen appearance in human head-hair shafts and its use for monitoring glycation products in diabetes.” Journal of immunological methods vol. 320,1-2 (2007): 1-17. doi:10.1016/j.jim.2006.10.014
