30代を過ぎると、肌のくすみ、髪のパサつき、そして何となく感じる“年齢のサイン”。
それってもしかすると「糖化」が関係しているかもしれません。
糖化とは、体内の余分な糖とタンパク質が結びついて、AGEs(終末糖化産物)という老化物質を作り出す現象。お肌のハリや髪の強度を損なう原因のひとつとも言われています。
では、この糖化にどう立ち向かえばいいのでしょうか?
最近の研究で注目されているのが、日本でも古くから親しまれてきた「ヒシ」、学名Trapa bispinosaの果皮に含まれるポリフェノールの力です。

ヒシ果皮ポリフェノールとは?
最新の研究(Iwaoka et al., 2021)では、ヒシの果皮から30種類以上のポリフェノールが抽出され、その中にはガロタンニンやエラジタンニン、そして特に注目されるネオリグナン配糖体が含まれていました。
これらの成分の中で、特にAGEsを抑える下記の成分が見つかりました。
- ガリル酸(没食子酸):AGEsを分解する力がある(32.2 mg/g)
- ガロイルグルコース類:AGEsの生成を抑えることが明らかに
- 脱炭酸ラグジンA:糖の吸収を抑えるα-グルコシダーゼを強力に阻害
ガリル酸(没食子酸)の多彩な力
ガリル酸よりも没食子酸としての名称の方が有名でしょうか。このコラムではガリル酸としてその機能について簡単に紹介していきますね!
ガリル酸自体については近年のレビュー論文(Wianowska & Olszowy-Tomczyk, 2023)で、その多面的な健康効果が整理されています。
- 強力な抗酸化作用で細胞の酸化ストレスを軽減
ガリル酸は活性酸素種(ROS)を直接捕捉し、細胞膜やDNAへの酸化ダメージを軽減します。これにより、紫外線やストレスによる肌老化の抑制、動脈硬化や生活習慣病の予防が期待されています。 - 抗炎症作用
炎症性サイトカインの産生を抑え、用量依存的に疾患活動性指数(リウマチの評価に用いる指標)を低下させ、大腸や胃の粘膜変化といった肉眼的および顕微鏡的損傷を軽減することも確認されています。 - 抗菌作用
サルモネラ、大腸菌、黄色ブドウ球菌、ピロリ菌、カンピロバクター属、緑膿菌に対して抗菌活性を有することが証明されています。 - 抗がんや神経などの広範な生理活性
細胞周期の停止やアポトーシス(細胞死)の誘導を通じ、がん細胞の増殖を抑える作用が基礎研究で示されています。また、抗酸化酵素活性、神経炎症性サイトカイン、細胞質Ca²⁺濃度、ROS生成の調節により神経保護作用として、アルツハイマー病やパーキンソン病など神経変性疾患の有効な治療候補としても注目されています。
このレビューでは多くの研究からガリル酸の貴重な研究をまとめていました。
「きちんとした分析に裏付けられている」というのはとても大切なポイントですね。

美しさと健やかさの両立をめざして
ヒシ果皮ポリフェノールは、糖化を“抑える”だけでなく、すでにできたAGEsを“分解する”力まで秘めている点がユニークです。これは、一般的な抗糖化素材と比べても注目すべき特徴ですね。
また、ヒシに多く含まれるガリル酸には非常に有用な生理活性があることもわかってきました。
「くすみが気になる」「糖質ケアも気になるけれど、甘いものはやめられない」そんな女性たちにこそ、ヒシ由来の成分は味方になってくれるかもしれません。
引用文献
- Iwaoka, Yuji et al. “Characterization and Identification of Bioactive Polyphenols in the Trapabispinosa Roxb. Pericarp Extract.” Molecules (Basel, Switzerland) vol. 26,19 5802. 24 Sep. 2021, doi:10.3390/molecules26195802
- Wianowska, Dorota, and Małgorzata Olszowy-Tomczyk. “A Concise Profile of Gallic Acid-From Its Natural Sources through Biological Properties and Chemical Methods of Determination.” Molecules (Basel, Switzerland) vol. 28,3 1186. 25 Jan. 2023, doi:10.3390/molecules28031186
